LIVE AND LET DIE (1973年/主演:ロジャー・ムーア)
 007 死ぬのは奴らだ


 ロレックス サブマリーナ Ref.5513
 パルサー パルサーII




登場シーン解説

パルサー 本作ではボンドは2つの時計をしている。最初にベッドで目覚めたときにしているのは 赤いLEDでデジタル表示するパルサーの時計だ。ボタンを押している間だけ時間が表示されるという 代物。ボンドは2度も押してこれ見よがしに光らせている。70年代に流行っていたらしいのだが、映画のほうが時代を先取り していたか、その真っ只中だったかは私は当時を知らないもので良く分からない。このパルサーは画面に登場して数分後には ボンドの時計としての役目を終えている。

マネーペニー(ボンドの上司であるMの秘書)から、Qに修理してもらっていたというサブマリーナを受け取るのだ。 これで先程のパルサーは単なる代替品に過ぎず、映画にハイテクの要素を盛り込むためだけに使われたということがわかる。 この作品が1作目となるロジャー・ムーアとジェームズ・ボンドを結びつけるため、サブマリーナを前から 使っていたとイメージさせるシーンとなっているのだ。また、最初のパルサーが表示していた時間から4分後、 サブマリーナの時計もおよそ4分後を指している。映画の中の世界と実際の経過時間も同じなのだ。 映画ではこのへんがいい加減になりがちだが、なかなか細かいところまで行き届いているようだ。 それもダウトシーンの多い007シリーズだけになおさら驚きだ。


時計を受け取ったボンドは耳元で振ったりしている。ローターが回るのを確かめているのだろうか? そしてコーヒーを飲みながら「時計の修理ぐらい街の時計屋に出せ」というMに対して特殊機能を披露し、 普通の時計屋では扱えない特別なモノであることを証明する。 このサブマリーナは超強力磁石として機能し、Mの手元のスプーンを吸い付けるのだ。 説明によると弾道をそらすことも可能らしい。この機能を作動させると文字盤のインデックス部分が赤に切り替わる。
このすぐ後でも、ボンドは女性の服のファスナーをこの時計で引きつけて降ろしている。なんともボンドらしい、というよりロジャー・ムーアらしい使い方だ。

劇中ではワニの池から脱出するときにボートを引きつけようとして利用する。ボートの金具が磁石に反応し、ボンドのほうに吸い寄せられるのだが、ボートはロープで固定されておりそれ以上動かず失敗に終わる。

また、ミスター・ビッグ(実はカナンガと同一人物)につかまったとき、時計をよこせといわれる。占いを信じて行動する彼らはソリテアの占いが当たるかどうか確かめるため、その時計を手にとって「ボンドの時計の製造番号は3266である。合ってるか?」と質問をするのだ。ブレスをはずさずに番号がわかる彼らもすごい(苦笑)  というか4ケタはありえないような気がする。きっと裏ぶたにイギリス情報部の管理ナンバーでも書いてあってそのことを言ったのかもしれない。

弾を手元に吸い付ける なんと電動カッターに
クライマックスでは、敵に捕まったボンドはまたも時計を利用する。サメのプールの上でロープで両手を縛られ身動きのとれないボンドは、まず、かなり遠くにあるサメ用圧縮ガス弾を時計の磁石機能を使って吸い付ける(これは後にマンガチックな方法で敵をやっつけるときに使うものだ)あんなに遠くのものが吸い付くのであれば、近くの鉄製品全てが自分に向かって飛んでくるわけだから 危険極まりない機能だ(笑)

細かいことを書けば、この磁石機能はどうやってオンにするのかが分からない。冒頭では字幕で「リューズを引けば・・・」といっているが、劇中ではベゼルを回転させていたりする。スプーンを吸い付けるデモでは、スプーンは時計の6時側に吸い付けられたが、 圧縮弾を吸い付けたときには12時側に吸い付いている。いったいどちらに磁気が発生してるのかも不明だ。 そもそもあんな強力な磁気を発生させているのに時計として機能しているのか気になるところだ。 だから修理に出していたのか?

そして、最初に説明がなかった隠し機能がカッター(ノコギリ)機能だ。時計のベゼルが(文字盤なども一緒に)回転しロープを切るのだ。とにかくこの時計の画期的な機能は謎でいっぱいだ。ベゼルの淵もいたって普通のもののようだが、それでも回転させればロープが切れるのだろうか?しかもベゼルを軽く動かすだけで周り始める。磁石機能との使い分けはリューズ操作で変えているんだろうか?それに電池のない機械式時計なのにどこにそんな電源があるんだ?とも思ってしまう。こんなふうにあら探しすればいくらでも見つかりそうだが理屈抜きで面白い機能だ。シリーズ中で1番インパクトの強い時計だろう。



時計解説

パルサー

70年代に流行ったLEDで時間をテジタル表示する時計。ボタンを押している間だけ光る。現在でもパルサーのLEDウオッチは、 アンティークで数万から十数万円で販売されていたりする。今日の一般的な液晶表示のデジタル時計にくらべて、LEDの光り具合が 独特の雰囲気を漂わせる。劇中で使われたモデルはPulsarIIというもののようだ。


サブマリーナ

初代ボンド、ショーン・コネリーがつけていたサブマリーナをめぐっては、今でも様々な説が飛び交っているが、 本作でロジャー・ムーアが使っていたサブマリーナはRef.5513ということでほぼ確定している。

映画会社やロレックスから正式にRef.5513と発表されているわけではないが、98年9月に007シリーズの撮影で使われた品が クリスティーズのオークションに出品された(※)とき、Ref.5513であると取り上げていたページもあるのでほぼ間違いないようだ。というかあの年代でリューズガードがついたサブマリーナのノンデイトは5513ぐらいしかないはずだ。5512というのも存在するが、それはクロノメーター表記があるものなのでこのボンドモデルには該当しない。

(※ちなみにオークションに出品されたときのモデルのケースナンバーは“2912634”(2911263説あり)らしい)

Ref.5513は60年代後半から80年代後半まで生産されたモデルであり、ムーブメントの違いやインデックスの縁取りの有無、 文字盤の表記にも多少違いが見られる。その中でも分かりやすいのは文字盤下半分の表記で、それは雑誌などを見る限り3種類ほどあるようだ。


初期

200m = 660ft
SUBMARINER


後期

SUBMARINER
660ft = 200m


上の2つとも雑誌に載っているショップの在庫情報などでよく見かける。後期のモデルの“SUBMARINER”表記が1段目というものは現行のサブマリーナにも引き継がれている。なお80年代半ば(85年?)になるとインデックスに縁取りがつく。


そして初期と後期の間の70年代を中心に出回ったモデル
これがロジャー・ムーア版のボンドモデルだ!!


660ft = 200m
SUBMARINER


これも雑誌で見かけることが多いが、それでも上の2つに比べれば少ないようだ。おそらくすぐに1段目と2段目の入れ替えがされてしまったからなのだろう。 この映画『死ぬのは奴らだ』の公開は73年で、ロケは72年9月に始まっているが、だいたいその時期に合致するのではないだろうか。

雑誌やショップなどではボンドモデルといえば初代ボンド、ショーン・コネリーのしていたタイプ(ほとんどは曖昧)を紹介しているが、 このロジャー・ムーアがしていたモデルはまったく紹介されないのだ。理由としては2つほどある。
1つに5513というモデル自体がタマが豊富でそれほど稀少ではないこと。もう1つは3代目ボンド、ロジャー・ムーアの知名度&カリスマ度が、ショーン・コネリー比べればやや劣るということもあるだろうか。
だが、このRef.5513もジェームズ・ボンドがつけていたことに変わりない。それも歴代ボンドウォッチの中でもっともインパクトが強かった物なので少しぐらい話題にしてくれてもいいじゃないかと私は思う。



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